ニころでむだなことだった。ジルノルマン氏は爪《つめ》の先まで祖父ではあったが、一点も大伯父たるところはなかった。
 実のところ、彼は才智をそなえていてふたりを比較していたので、テオデュールがいることはますますマリユスを惜しむの念を強めるばかりだった。
 ある晩、六月の四日であったが、ジルノルマン老人はなお暖炉に盛んな火をたかして、娘を隣室に退かせ縫い物をさしていた。そして彼はひとりで牧歌的な飾り立てをした室《へや》に残っていて、薪台の上に足を置き、コロマンデルの広い九枚折り屏風《びょうぶ》に半ば囲まれ、緑色の笠《かさ》の下に二本の蝋燭《ろうそく》が燃えているテーブルに肱《ひじ》をつき、毛氈《もうせん》の肱掛け椅子《いす》に身を埋め、手に一冊の書物を持っていた。しかし別にそれを読んでるのでもなかった。いつものとおりアンクロアイヤブル([#ここから割り注]執政内閣時代の軽薄才子[#ここで割り注終わり])式の服装をして、ちょうどガラー([#ここから割り注]訳者注 大革命から帝政時代の政治家[#ここで割り注終わり])の古い肖像を見るがようであった。そんな服装で往来に出ようものなら人だかりがする
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