スの?」
彼はコゼットがようやく聞き得たくらいの低い声で答えた。
「私にはあなたの言ったことがわからない。」
彼女は言った。
「今朝《けさ》お父さんが私におっしゃったのよ、細かいものを皆整えて用意をするようにって。そして鞄《かばん》の中に入れるシャツを下すったの。旅をしなければならないんですって。いっしょに行くんですって。私には大きい鞄がいるし、お父さんには小さい鞄がいるのよ。そして今から一週間のうちに支度をするのよ。おおかたイギリスに行くだろうとおっしゃったわ。」
「ひどい!」とマリユスは叫んだ。
その時確かにマリユスの考えによれば、いかなる権力の濫用《らんよう》も、いかなる暴戻《ぼうれい》も、極悪な暴君のいかなる非道も、ブジリスやチベリウスやヘンリー八世のいかなる行為も、フォーシュルヴァン氏が自分の用のために娘をイギリスに連れてゆくということくらい、おそらく乱暴なことはないのであった。
彼は弱々しい声で尋ねた。
「そしていつ発《た》つの。」
「いつともおっしゃいませんでした。」
「そしていつ帰って来るの。」
「いつともおっしゃいませんでした。」
マリユスは立ち上がって、冷
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