ネ光景に返った。
街路で今起こったことも、森を驚かすことはできなかったのである。大木、蘖《ひこばえ》、灌木《かんぼく》、深く交差した枝、高い草、皆陰惨な存在を保っている。荒々しい群れはそこに、目に見えざるものが突然姿を現わすのを見る。人界以下のものが、靄《もや》を通して、人界の彼方《かなた》のものをそこに見いだす。われわれ生ある者の知らぬ諸々《もろもろ》のものが、夜のうちにそこで互いに顔を合わせる。毛を逆立てた粗野な自然は、超自然的と思われる種々のものが近づくのを感じて狼狽《ろうばい》する。諸々のやみの力は互いに知り合い、互いに不思議な均衡を保っている。牙《きば》や爪《つめ》も、つかみ得《う》べからざるものを恐れる。血をすする獣性、餌物《えもの》をさがす飢えたる貪欲《どんよく》、爪と顎《あご》とをそなえ腹のみがその源であり目的である本能、それらのものは、平然たる幻の姿をおずおずとながめまたかぎまわす。その姿は経帷子《きょうかたびら》に包まれて彷徨《ほうこう》し、おぼろなるうち震う上衣にくるまって直立し、死の世界の恐ろしい生命に生きてるがようである。ただ物質にすぎない獰猛性《どうもうせ
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