閧オめるだけで満足することが多かった。そういう時には、三十歩ばかり向こうに雷が落ちても、彼らは気づかなかったかも知れない。それほど彼らは互いに夢想にふけり、互いに深く夢想のうちに引き入れ合っていた。
 澄み切った純潔さ。純白な時間、ほとんど差別ない時間。この種の愛は、百合《ゆり》の花弁を集め鳩《はと》の羽を集めたものである。
 庭の全部が彼らと街路とをへだてていた。マリユスははいってきたり出て行ったりするたびごとに、鉄門の棒を注意してよく元になおし、動かした跡が少しも見えないようにした。
 彼はたいてい十二時ごろ帰ってゆき、クールフェーラックのもとに戻った。クールフェーラックはバオレルに言った。
「おい君、マリユスはこの頃夜の一時ごろ帰ってくるんだぜ。」
 バオレルは答えた。
「驚くには及ばないさ。謹厳な者にはどうせ無鉄砲なことがある。」
 時々、クールフェーラックは腕を組み、まじめなふうをして、マリユスに言った。
「君は無茶になってるね。」
 実際家であるクールフェーラックは、マリユスの上に漂っている目に見えぬ楽園の反映を、よいことには思わなかった。彼は秘めたる恋愛などというものには
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