、と言わるれば、「ええお父様」と彼女は答えた。家にいようと言わるれば、「そうしましょう」と彼女は答えた。晩にいっしょにいられると、彼女は喜ばしい顔をした。彼女はいつも晩の十時に自分の室《へや》に帰ってゆくので、そういう時マリユスは十時すぎでなければ庭にやってこなかった。その時はいつも、コゼットが踏み段の戸を開く音が街路から聞かれるのだった。昼間マリユスがだれからも姿を見られなかったのは、言うまでもないことである。ジャン・ヴァルジャンはもうマリユスのことを頭にも浮かべなかった。ただある朝一度、彼はコゼットにこう言った。「おや、お前の背中に白いものがついているよ。」その前夜マリユスは、夢中になってコゼットを壁の方に押しつけたのだった。
 トゥーサン婆さんは、いつも仕事がすめば寝ることしか考えていなく、早くから寝てしまったので、ジャン・ヴァルジャンと同様何事も知らなかった。
 マリユスは決して家の中にはいらなかった。コゼットとふたりでいる時、街路から見られもしないように、踏み段のそばの奥まった所に彼らは隠れて、そこに腰をおろし、話をする代わりに、ただ樹木の枝をながめながら、互いに何度も手を握
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