治上の法律は、神法の一分枝に過ぎなくて、ブールボン家自らそれを折り取って、王が再び手にせんと欲する日まで人民に許し与えたものであると。しかしながら、人民へのその贈り物は実はブールボン家から贈ったものでないということを、それがたとい不快であろうともブールボン家自身感ずべきはずだったのである。
ブールボン家は十九世紀には至って神経質であった。そして国民が翼をひろげるごとに悪い顔つきをした、平凡なる、すなわち通俗で真実なる言葉を使えば、渋面を作った。民衆はそれを見たのである。
ブールボン家は、自分の前に帝政が劇場の大道具のごとく運び去られてしまったゆえに、自ら力を持っているものと信じた。しかし、ブールボン家自身も同じようにして持ちきたされたものであることに気づかなかった。自分もまたナポレオンを奪い去った同じ手の中にあることを知らなかった。
ブールボン家は、自分は過去であるゆえに確固たる根を持っていると信じた。しかしそれは誤解であった。ブールボン家は過去の一部分のみであって、全過去はフランス自身であった。フランス社会の根はブールボン家の中にはなくて、国民のうちにあった。その人知れぬ頑丈《
前へ
次へ
全722ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング