人となった言語である。
 人の思考力がいかに底深い所につき落とされているか、そこで宿命の暗澹《あんたん》たる暴虐からいかにむごたらしく引きずられ縛り上げられているか、その深淵《しんえん》の中でいい知れぬ鈎《かぎ》にいかにしかと結び止められているか、それを見ては心おびえるほどである。
 ああ、みじめなる者らのあわれなる思想よ!
 悲しいかな、この影のうちにある人の魂をだれも救いにこないのであろうか。精神を、救済者を、ペガサス([#ここから割り注]翼馬[#ここで割り注終わり])やヒポグリフ([#ここから割り注]鷲頭怪馬[#ここで割り注終わり])などに乗った広大な騎者を、両翼をひろげて蒼天からおりて来る曙《あけぼの》の色に輝いた戦士を、燦然《さんぜん》たる未来の騎士を、かかる宿命は永遠に待っていなければならないのであろうか。理想の光明の槍《やり》に向かって救いを求むる声も、ただいたずらに響くのみであろうか。ドラゴン(竜)の頭が、泡《あわ》を吐く顎《あご》が、獅子《しし》の爪《つめ》と鷲《わし》の翼と蛇《へび》の尾とでうねり行く怪物が、悪の深淵の深みのうちを恐ろしく渡りくる音を聞き、恐るべき水
前へ 次へ
全722ページ中372ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング