ナある。しかし、雨と夜と飢えと不徳と欺瞞《ぎまん》と不正と裸体と窒息と厳冬などでできているこの広い灰色の靄《もや》の中を、行き、きたり、飛び回り、はい回り、のさばり歩き、奇怪に動き回ってるその恐るべき蟇《がま》の言語も、悲惨なる者らにとっては白日なのである。
 懲戒を受けた者らに同情を持とうではないか。ああ、我々自身も果たして何であるか。これを語る私自身は何であるか。これを聞く汝ら自身は何であるか。我々はどこからきたのであるか。生まれる前にも何ら罪を犯さなかったと確言し得らるるか。この世は牢獄に似ているところがあるではないか。人は神の裁きを受けていないとは、だれが知ろう。
 近寄って人生をながめるがいい。人生は至る所に刑罰を感ぜさせるようにできている。
 汝は人に幸福といわるる身分であるか。しかも汝は毎日悲しんでいるではないか。一日には一日の大なる苦しみがあり、あるいはまた小さき心配がある。昨日は親しき者の健康について戦《おのの》き、今日はおのれの健康について気づかっている。明日は金銭上の心配、明後日は誹謗者《ひぼうしゃ》の陰口、次の日は友人の不幸が来る。次には天気のこと、その次には何
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