ニ隠密なしかし整然たる平衡を保ち、底のあらゆる動揺はまた表面の波紋を生ぜしむる。真の歴史はすべてに関係を有し、真の歴史家はすべてに交渉を有する。
 人間はただ一つの中心を持つ円ではない。二つの中心を持つ楕円《だえん》である。事実は一つの中心であり、思想はも一つの中心である。
 隠語は、何かの悪事をなす時に言語が仮装するその衣服部屋に外ならない。そこで言語は、仮面の言葉とぼろの比喩《ひゆ》とを身にまとう。
 かくしてこの言語は恐ろしい姿になる。
 もはやその本来の顔はほとんど認められない。これは果たしてフランス語であろうか、人間の大国語であろうか? 既に舞台に上がるばかりになっており、罪悪に台辞《せりふ》を与えるばかりになっている。悪の芝居のあらゆる人物にふさわしいものとなっている。もはやまっすぐに歩かないで跛《びっこ》を引いている。クール・デ・ミラクル([#ここから割り注]訳者注 昔乞食や浮浪人らの集まっていたパリーの一部[#ここで割り注終わり])の撞木杖《しゅもくづえ》にすがって、棍棒《こんぼう》に変わり得る撞木杖にすがって歩いている。自ら無宿者《やどなし》と称している。あらゆる妖怪
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