つの深淵《しんえん》があって、身を動かすこともできず、あるいは目がくらんで墜落しそうになり、あるいは捕縛さるるに違いないという恐怖に駆られ、考えは絶えず時計の振り子のように二つの思いの間を往来した、「落ちれば死ぬ、このままではつかまる。」
 そういう苦悶《くもん》にとらえられているうち、まだまっ暗な街路に、彼は突然人影を認めた。その男はバヴェー街の方から壁に沿って忍んでき、ぶら下がったようになってるテナルディエの下の方の奥まった所に立ち止まった。するとまた第二の男が同じように注意して忍んでき、第一の男といっしょになり、次に第三の男がき、次に第四の男がきた。四人がいっしょになると、そのひとりは板塀についてる戸の※[#「金+饌のつくり」、第4水準2−91−37]《かけがね》をはずし、板小屋のある囲いのうちに四人ともはいってしまった。そして彼らはちょうどテナルディエのま下になった。彼らは明らかに何か相談せんためにその奥まった所を選んだのである。そこは通行人の目にもつかず、また数歩先にあるフォルス監獄、潜門《くぐりもん》を番してる歩哨《ほしょう》から見られもしなかった。それからまた、歩哨は雨の
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