力を天才となすものであって、その渇望の念に啓発されたテナルディエは、あるいは第三の方法を即座に発明したのかも知れなかった。しかしそれはついに不可解に終わった。
 神変をきわむる脱走の跡を明らかに調べ上げることは、常にできるものではない。繰り返して言うが、遁走する男は一つの霊感を得た者である。遁走の神秘な輝きのうちには、星があり電光がある。解放の方へ向かってなさるる努力は、崇高なるものの方へ向かってなさるる羽ばたきに劣らず驚嘆すべきものである。そして人は脱走囚徒について、「あの屋根をいかにして彼は越したか?」という。それはあたかもコルネイユについて、「彼が死したらんことを[#「彼が死したらんことを」に傍点]どこから彼は見いだしたか?」というに同じである([#ここから割り注]訳者注 コルネイユの戯曲オラース。生き残った一人の子が三人の敵の前から逃げ出した報知を聞いて憤った老オラースの悲壮な言葉、むしろ彼が死したらんことを[#ここで割り注終わり])。
 それはとにかく、汗を流し、雨にぬれ、着物は裂け、手の皮はすりむけ、肱《ひじ》は血にまみれ、膝《ひざ》は傷つきながら、子供の比喩《ひゆ》の言葉
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