までやって来るのに、彼は屋根職人の梯子《はしご》や足場を使ったのであろうか? しかしその道筋のうちにはほとんど越ゆることのできそうもないへだたりがあった。あるいはまた、望楼の屋根からまわりの路地の壁の上へ、寝台の板を橋のように渡して、それから囲壁の屋根の上を腹ばいになり監獄を一周して、その破家まできたものであろうか? しかしフォルス監獄のまわりの路地の壁は、歯車形の不規則な線を描いていて、あるいは上り、あるいは下り、消防夫|屯所《とんしょ》の所では低くなり、湯屋の所では高くなり、種々な建物で中断され、ラモアニョン旅館の上とバヴェー街の上とは高さが異なり、至る所に坂や直角があった。その上逃走者の暗い影は番兵らの目についたはずである。だからこの方面においても、テナルディエの道筋はほとんど説明がつかなかった。で結局二つの方法のうちどちらも、その遁走《とんそう》は不可能であった。けれども自由に対する命がけの渇望は、深淵《しんえん》をも浅い溝《みぞ》となし、鉄の格子《こうし》をも柳の枝の簀子《すのこ》となし、跛者《はしゃ》をも壮者となし、足なえをも鳥となし、愚鈍を本能となし、本能を知力となし、知
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