のはなに?」
「猫よ。」
「猫を食ったのはなに?」
「鼠《ねずみ》だ。」
「ちゅうちゅが?」
「うむ、鼠だ。」
 子供は猫を食うというそのちゅうちゅにびっくりして、なお尋ね出した。
「おじさん、私たちまで食べますか、そのちゅうちゅは。」
「あたりまえさ。」とガヴローシュは言った。
 子供の恐怖は極度になった。しかしガヴローシュは言い添えた。
「こわがるこたあねえ。はいれやしないんだ。その上|俺《おれ》がついてる。さあ俺の手を握っておれ。そして黙ってねくたばるんだ。」
 ガヴローシュはすぐに、兄の上から手を伸ばして子供の手を握ってやった。子供はその手をしっかと抱きしめてようやく安心した。勇気と力とはそういうふうに不思議に伝わってゆくものである。あたりはまたしいんとなった。人の声に驚いて鼠《ねずみ》も遠くに逃げていた。しばらくたって、鼠はまた戻ってきて騒ぎ出したが、三人の子供はもう眠っていて、何にも聞かなかった。
 夜は更《ふ》けていった。広いバスティーユの広場は闇《やみ》におおわれていた。雨を交じえた冬の風は息をついては吹き荒《すさ》んでいた。見回りの警官らは、戸口や路地や垣根や薄暗いす
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