まらねえ。それぐらいのことに泣いてるのか。カナリヤみたいだな。」
そして年長者らしい嘲弄《ちょうろう》半分の気持から、少しかわいそうに見下すようなまたやさしくいたわるような調子で言った。
「まあ俺《おれ》といっしょにこいよ。」
「ええ。」と年上の方が言った。
そしてふたりの子供は、大司教のあとにでもついてゆくようにして彼のあとに従った。もう泣くのをやめていた。
ガヴローシュは彼らを連れて、サン・タントアーヌ街をバスティーユの方へ進んでいった。
彼は歩きながら、ふり返って理髪屋の店をじろりとにらんだ。
「不人情な奴《やつ》だ、あの床屋め。」と彼はつぶやいた。「ひどい野郎だ。」
ガヴローシュを先頭に三人が一列になって歩くのを見て、ひとりの女が大声に笑い出した。三人に敬意を欠いた笑い方だった。
「こんちは、共同便所お嬢さん。」とガヴローシュはその女に言った。
それからすぐにまた、理髪師のことが頭に浮かんできて、彼はつけ加えた。
「俺《おれ》は畜生を見違えちゃった。あいつは床屋じゃねえ、蛇《へび》だ。ようし、錠前屋を呼んできて、今にしっぽに鈴をつけさしてやらあ。」
理髪師は彼の気
前へ
次へ
全722ページ中267ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング