ない」と称するものだった。しかしそれは決してだらしないものではなくて、何よりもまずかわいいものであった。彼女はなぜとも自ら知らないでそういうふうに身じまいをした。
彼女は出かけるつもりだったのか。否。
彼女は人の訪問を待っていたのか。否。
薄暗くなって、彼女は庭におりていった。トゥーサンは後ろの中庭に面した台所で用をしていた。
コゼットは低い枝があるのを時々手で払いのけながら、木の下を歩き出した。
そして彼女は腰掛けの所へ行った。
石はまだそこにあった。
彼女はそこに腰をおろし、やさしい白い手を石の上に置いた。あたかもそれをなでて礼を言ってるかのようだった。
と突然彼女は、だれかが後ろに立ってるのを目には見ないでもそれと感ぜらるる、一種の言い難い感じを受けた。
彼女はふり向いて、立ち上がった。
それは彼であった。
彼は帽子もかぶっていなかった。色は青ざめやせ細ってるようだった。その黒い服がようやく見分けられた。薄ら明りはその美しい額をほの白くし、その目を暗くなしていた。たとえようのないしめやかな靄《もや》の下に、何となく死と夜とを思わせる様子をしていた。その顔は暮
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