だろうか。」その時彼女は、上衣の下のいとしい紙にさわってみ、それを胸に押しつけ、自分の肉体の上にその角を感じた。そういう時もしジャン・ヴァルジャンが彼女を見たならば、その眼瞼《まぶた》のうちにあふれてるなぜともわからぬ光り輝いた喜びを見て、身を震わしたであろう。彼女は考えた。「そう、確かにあの人だわ。これは私にあててあの人から下すったのに違いない。」
 そして彼女は自ら言った、天使が中に立ち天が力を貸してあの人をまた自分の所へこさしたのであると。
 おお愛の変容よ、おお夢よ! この天の助力とは、この天使の仲介とは、フォルス監獄の屋根越しにシャールマーニュの中庭から獅子《しし》の窖《あなぐら》へ、一盗賊から他の盗賊へあてて投げられた、あの一塊のパンの球《たま》にほかならなかったのである。

     六 老人は適宜に外出するものなり

 晩になってジャン・ヴァルジャンは出かけた。コゼットは服装《みなり》を整えた。まず一番よく似合うように髪を結び、それから一つの長衣をつけたが、その襟《えり》は一|鋏《はさみ》だけよけいに切ったもので、そこから首筋が見えていて、若い娘らがいわゆる「少しだらし
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