「よく手入れがしてない、」その庭の中に、ロココ式の古ぼけた鉄門の後ろに、かなりの美人がいて、この美しい中尉が通る時にはたいていそこに出ていることに気づいた。この中尉というのは読者の知らない男ではなく、テオデュール・ジルノルマンにほかならなかった。
「おい、」と友人らは彼に言った、「君に目をつけてる娘がいるぞ、少し見てやれ。」
「俺《おれ》を見てる娘っ子に一々気をとめるだけの隙《ひま》があるもんか。」と槍騎兵《そうきへい》は答えた。
 それはちょうどマリユスが、苦悶《くもん》の方へ深く沈んでゆきながら、「死ぬ前にただ彼女に再び会うことができさえするならば!」と自ら言ってる時だった。もし彼の希望が達せられ、その時槍騎兵をながめてる彼女を見たならば、彼は一言をも発することができず、悲しみのあまり息絶えたかも知れなかった。
 それはだれの罪であったか? 否だれの罪でもない。
 マリユスは懊悩《おうのう》のうちに沈み込んでそこに長く留まってるという気質の男だった。コゼットは懊悩のうちに身を投じてもまたそこから出て来るという気質の女だった。
 その上コゼットは、危険な時期を通っていた。それは自分の
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