と耳との力を合わして、のぞきまた聞いていた。夢中になっておもしろがっていた。
 彼は一生懸命にうかがっていただけのことがあった。暗闇《くらやみ》のために妙に悲痛に聞こえる次の対話をそっくり聞き取り得た。老人は尋ね、モンパルナスは答えた。
「お前は幾歳《いくつ》だ。」
「十九。」
「お前は強くて丈夫だ。なぜ働かないのか。」
「いやだからさ。」
「職業は何だ。」
「何にもしないことだ。」
「まじめに口をききなさい。いったい何をしてもらいたいのか。何になりたいのか。」
「泥坊にだ。」
 ちょっと言葉が途切れた。老人は深く考え込んだらしかった。彼はじっと立ったまま、モンパルナスをとらえていた。
 元気で敏捷《びんしょう》な若い悪漢は、時々、罠《わな》にかかった獣のようにあばれた。飛び上がり、足がらみにゆき、激しく手足をもがき、逃げ出そうとした。しかし老人はそれに気も止めないらしく、絶対的強力のおごそかな無関心さをもって、片手で相手の両腕をとらえていた。
 老人はしばらく考え込んでいたが、それからモンパルナスをじっと見つめながら、静かに声を上げて、その暗闇《くらやみ》の中で荘重な弁舌を振るい始め
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