うにお金なしでは暮らしていけません。」
「といって一文なしだからね。」
婆さんは行ってしまって、老人が一人残った。彼は考え込み始めた。ガヴローシュの方でも考え込んだ。もうほとんど夜になっていた。
考えた結果ガヴローシュはまず、生籬《いけがき》を乗り越すことをやめて、その下にもぐり込んだ。茂みの下の方に少し枝のすいてる所があった。
「おや、ちょうどいい寝場所だ!」とガヴローシュは心の中で叫んで、そこにうずくまった。彼の背中はほとんどマブーフ老人のベンチに接するほどになって、その八十翁の息まで聞くことができた。
そして彼は食事にありつかんために一寝入りしようとした。
それは猫《ねこ》の居眠りであり、片目の微睡であった。うつらうつらしながらガヴローシュは待ち受けていた。
薄ら明りの空の光は地面にほの白い光を送って、小路は暗い二条の叢《くさむら》の間に青白い線を描いていた。
突然その青白い一筋の道の上に、二つの人影が現われた。一つは先に立ち、一つは少しあとに離れていた。
「ふたりの男がやってきたぞ。」とガヴローシュはつぶやいた。
先頭の人影は年取った市民らしく、少し前かがみに何か
前へ
次へ
全722ページ中208ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング