リップ以前の諸王の系統[#ここで割り注終わり])の古来のふしだらな逸楽の後にあってはごく有効であった。またヨーロッパの各国語に通じ、ことに珍しいことには、あらゆる階級の言葉に通じ、それを常に話していた。最もよく「中流社会」を代表した人物であったが、また一方にそれより抜きん出て万事にそれよりもすぐれていた。自分の血統を自負しながらも、自分自身の価値を特に重んずるだけのすぐれた精神を持っていた。そして自分のごくまれなる家柄のことについても、自らオルレアン家と称してブールボン家とは称さなかった。まだ殿下というに過ぎなかった頃は、一流の血統の王侯であったが、陛下となるにおよんでは磊落《らいらく》な市民となった。公の間では不得要領であったが、親しい個人間では簡明であった。有名な吝嗇家《りんしょくか》であったが、しかししっぽをつかまれるような吝嗇家ではなかった。根本においては、自分のでき心や義務のためには容易に浪費者となる底《てい》の蓄財家だった。文学に通じていたが、文芸に心動かされることは少なかった。りっぱな紳士であったが、騎士型の人ではなかった。単純で静平でしっかりしていた。家族の者らや一門の
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