が最初に感じたものは、漠然《ばくぜん》とした深い憂愁だった。直ちに自分の心がまっくらになったような気がした。もう自分で自分の心がわからなくなった。年若い娘の心の白さは、冷淡と快活とから成ってるもので雪に似ている。その心は恋にとける、恋はその太陽である。
コゼットは愛ということを知らなかった。現世的の意味で愛という言葉が言わるるのをかつて聞いたことがなかった。俗世の音楽書にあるアムール(愛)という音は、修道院の中にはいって行くとタンブール([#ここから割り注]太鼓[#ここで割り注終わり])もしくはパンドゥール([#ここから割り注]略奪者[#ここで割り注終わり])と代えられていた。「ああタンブールとはどんなにか楽しいことでしょう[#「ああタンブールとはどんなにか楽しいことでしょう」に傍点]!」とか、「憐愍《れんびん》はパンドゥールではありません[#「はパンドゥールではありません」に傍点]!」とかいうような言葉は、姉さま[#「姉さま」に傍点]たちの想像力を鍛う謎《なぞ》となっていた。しかしコゼットはまだごく若いうちに修道院を出たので、「タンブール」なんかにあまり頭を悩まさなかった。それで彼
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