いす》から立ち上がって言った。「外に出てみよう。そしたら元気が出てくるだろう。」
 そして彼はいつも雲雀《ひばり》の野へ行った。
 そこへ行くと、星はいっそうよく見えてき、サヴィニーとガンスとはいっそう見えなくなった。
 彼はまた帰ってきた。仕事を始めようと努めたが、どうしてもだめだった。頭の中で切れている糸の一筋をもつなぎあわせることはできなかった。すると彼は言った。「明日は出かけないことにしよう。出かけると仕事ができなくなる。」そうしてやはり毎日出かけていた。
 彼はクールフェーラックの家にいるよりも雲雀の野にいる方が多かった。彼の本当の住所はこうだった。「サンテ大通り、クルールバルブ街より第七番目の並み木。」
 その朝、彼はこの七番目の並み木を離れて、ゴブランの小川の欄干に腰をおろしていた。嬉々《きき》たる日の光が、新しく萌《も》え出たばかりの輝いてる木の葉の間にさし込んでいた。
 彼は「彼女[#「彼女」に傍点]」のことを夢みていた。そしてその夢想は、非難の形となって彼自身の上に落ちかかってきた。怠惰な日々、自分を侵していった魂の麻痺《まひ》、しだいに自分の前に濃くなって既に太陽
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