Bガヴローシュは一目で全局を見て取った。彼を危険に陥れたのは荷車だった、そしてこんどは荷車が彼を保護すべきだった。
 軍曹がガヴローシュの上に飛びかかろうとした時、荷車は弾《たま》となって一押しに投げやられ、軍曹の上に激しくつきかかった。軍曹はまっ正面からそれを腹に受けて、銃を空中に発射しながら、あおむけに溝《みぞ》の中にころげ込んだ。
 軍曹の叫び声に、衛舎の兵士らはどやどやと出てきた。そして一発の銃声を聞くと、やたらに発射した。
 その盲目滅法《めくらめっぽう》な射撃は、およそ十五、六分も続いた。そして数枚の窓ガラスを打ち破った。
 その間にガヴローシュは、一生懸命に退却して、そこから五、六街路先に立ち止まり、息を切らしながらある標石の上に腰をおろした。それはアンファン・ルージュ施療院の角《かど》だった。
 彼は耳を傾けた。
 しばらく息を休めた後に、彼は激しい銃火の音がしてる方へ振り向き、左手を鼻の高さに上げ、それを三度前の方へつき出し、一方では右手で頭の後ろをたたいた。それはパリーの浮浪少年らがフランス式の皮肉を集中した得意の身振りであって、きわめて利目《ききめ》の多いものであることは、既に半世紀も続いてきたのを見てもわかる。
 しかしその得意は、たちまちにがい考えで乱された。
「ほんとに、」と彼は言った、「俺《おれ》はおかしくて、擽《くすぐ》ったくて、うれしくて仕様がねえ。だが道がわからなくなっちゃった。回り道をしなくちゃなるめえ。間に合うように防寨《ぼうさい》に着けばいいが!」
 そこで彼はまた駆け出した。
 そして駆けながら言った。
「ところで、ここはどっちの方面かな?」
 彼は街路をやたらにたどりながら歌を歌い始めた。その歌は闇《やみ》の中にしだいに消えていった。

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だがまだ牢屋《ろうや》は残っているよ。
そんな秩序であるならば
俺《おれ》が鎮《しず》めてつかわそう。

 娘たちどこへ行く、
  ロン、ラ。

柱戯《キーユ》遊びをする者ないか。
大きな球が飛んだなら
古い世界は崩《くず》れよう。

 娘たちどこへ行く、
  ロン、ラ。

お心よしの老いぼれ人民、
ふざけた王位のルーヴルを
撞木杖《しゅもくづえ》にて打ちこわそうよ。

 娘たちどこへ行く、
  ロン、ラ。

俺《おれ》らは鉄門を破ってやったぞ。
シャール十世その
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