鉗ヌ酊《めいてい》の第二期に突然手荒く押し込まれたので、その常として、間もなく眠りに陥ってしまった。

     四 寡婦ユシュルーに対する慰謝

 バオレルは防寨《ぼうさい》ができたのに狂喜して叫んだ。
「さあ街路はふさがったぞ。うまくいった!」
 クールフェーラックは居酒屋を少しうちこわしながらも、寡婦《やもめ》の上さんを慰めようとしていた。
「ユシュルーお上《かみ》さん、こないだジブロットが敷き布を窓からふるったというので、警察から調べられて違警罪に問われたというじゃないですか。」
「そうですよ、クールフェーラックさん。ですがまあ、そのテーブルまであなたは恐ろしい所に持ち出すつもりですか。敷き布のことと、屋根裏から植木鉢《うえきばち》を一つ往来に落としたというだけで、百フランの罰金を政府《おかみ》から取られたんですよ。あまりひどいではありませんか。」
「だから、お上さん、われわれがその仇《かたき》をうってやろうというんです。」
 ユシュルー上さんは、今皆がなしてるような返報が自分のためになるとはよくわかっていないらしかった。彼女は昔のあるアラビアの女のような仕方で満足させられていたのである。その女というのは、夫《おっと》から頬《ほお》を打たれ、父の所へ行ってそれを訴え、返報を求めて言った、「お父さん、私の夫に対して侮辱の仕返しをして下さい。」父は尋ねた、「どちらの頬をお前は打たれたのか。」「左の頬です。」父は娘の右の頬を打って言った、「これでいいだろう。夫に言うがよい。彼は私の娘を打った、しかし私は彼の妻を打ったと。」
 雨はやんでいた。新たな者らも到着した。労働者らは上衣の下に隠して種々なものを持ってきていた、火薬の樽《たる》一個、硫酸の壜《びん》のはいってる籠《かご》一つ、謝肉祭用の炬火《たいまつ》二、三本、「国王祝名祭の残り物」たる灯明皿《とうみょうざら》のはいった一つの籠。この祭は少し前、五月一日に行なわれたのだった。それらの品物は、サン・タントアーヌ郭外のペパンという雑貨商の家から持ってこられたということである。また、シャンヴルリー街のただ一つの街灯、その向こうサン・ドゥニ街にある街灯、それからモンデトゥールやシーニュやプレシュールやグランド・トリュアンドリーやプティート・トリュアンドリーなど付近の街路のあらゆる街灯を、人々はこわしてしまった。
 ア
前へ 次へ
全361ページ中297ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング