ナあって、別に仕方がなかったのである。「まあ、まあ!」とユシュルー上《かみ》さんはため息をついていた。
ボシュエはクールフェーラックに会いにおりていった。
窓によりかかっていたジョリーは叫んだ。
「クールフェーラック、雨傘《あべがさ》ぼって来るとよかったんだ。風邪《かぜ》を引くよ。」
そのうちにやがて、居酒屋の店先の鉄格子《てつごうし》から多くの鉄棒はぬき取られ、十間ばかりの街路は舗石《しきいし》をめくられた。ガヴローシュとバオレルとは、アンソーという石灰屋の荷馬車を通りがかりに奪い取って、それをひっくり返した。馬車には石灰をつめこんだ樽《たる》が三つのっていたので、彼らはそれを下敷きにして舗石《しきいし》を積んだ。アンジョーラは窖《あなぐら》の揚げ戸を開いた。そしてユシュルー上《かみ》さんの空《から》の酒樽《さかだる》は皆石灰樽の横に並べられた。フイイーはいつも扇の薄い骨を彩色するになれた指で、切り石を二所《ふたところ》につんで石灰樽や馬車のささえにした。その切り石も他の物と同じく即座に取ってこられたもので、どこで得られたのかわからなかった。近くの家の正面からいくつもの支柱がぬき取られて、酒樽の上に横たえられた。ボシュエとクールフェーラックとがふり返った時には、街路の半ばは既に人の背丈よりも高い砦《とりで》でふさがれていた。他の物をこわしながら何かを築くには、群集の手に如《し》くものはない。
マトロートとジブロットも、人々の間に交じって働いた。ジブロットは漆喰《しっくい》の破片を運んで行ききしていた。元気のない彼女も防寨《ぼうさい》の手助けをしたのである。彼女はいつものとおり半ば眠ったような様子をしながら、酒を客に出すと同じように舗石を提供していた。
二頭の白馬をつけた乗り合い馬車が街路の向こう端を通った。
ボシュエは舗石をまたぎ越し、走って行って御者を呼び止め、乗客をおろし、「婦人ら」には手を貸してやり、御者を去らせ、馬車と馬とを手綱で引っぱってきた。
「乗り合い馬車はコラント亭の前を通るべからず。」と彼は言った。「人はすべてコラントに行き得るものに[#「人はすべてコラントに行き得るものに」に傍点]非《あら》ずだ[#「ずだ」に傍点]。([#ここから割り注]訳者注 コリントでは非常に金がかかるので普通の者はそこに遊び行くことができないという意味のギリシ
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