いては、各利害関係は、政治上の地質学者たる経済学者らから気長に研究された力学的法則に従って、互いに結合し凝結し化合して真の強固なる巌《いわお》を形成している。
 種々異なった名称の下に集まってはいるがこれを一括して社会主義者という通称で指示し得らるるそれらの人々は、右の巌《いわお》を貫かんとつとめ、人の幸福の生きた泉をそれよりほとばしり出させんとつとめていた。
 絞首台の問題から戦争の問題に至るまで、彼らの仕事はすべてを包含していた。フランス大革命によって宣言された男子の権利に、婦人の権利と子供の権利とを彼らはつけ加えていた。
 もとより吾人はここに、種々の理由から、社会主義によって起こされた問題をすべて理論上の見地から根本的に考究せんとするものではない。吾人はただそれらの問題を指示するに止めよう。
 宇宙|開闢《かいびゃく》論的見解や夢想や神秘説などを外にして、社会主義者らが提起する問題のすべては、二つの主要なる題目に帰結することができる。
 第一――富を作り出すこと。
 第二――富を分配すること。
 第一の題目には労働問題が含まれる。
 第二の題目には賃金問題が含まれる。
 第一の題目においては労力の使用が問題である。
 第二の題目においては享有の分配が問題である。
 労力の適宜なる使用から、公衆の勢力が生じてくる。
 享有の適宜なる分配から、個人の幸福が生じてくる。
 適宜なる分配とは、平等なる分配の謂《いい》ではなくて、公平なる分配の謂である。最上の平等とはすなわち公平のことである。
 外に現われては公衆の勢力と、内にあっては個人の幸福と、その二つが結びつく時に、社会の繁栄が生じてくる。
 社会の繁栄とは、幸福なる人間、自由なる公民、偉大なる国民、をさす言葉である。
 イギリスは右の二つの題目のうち第一だけを解決している。巧みに富を作ってはいるが、その分配は適宜でない。ただ一方だけが完成したにすぎないその解決は、イギリスを必然に二つの極端に導いている、すなわち、恐るべき富裕と恐るべき困窮とに。ある者らにはあらゆる享有、他の者らすなわち民衆にはあらゆる欠乏。特権、除外例、独占、封建制、などは労働からも生ずる。それは誤れる危険な状態であって、個々の困苦の上に公衆の勢力をうち立て、個人の苦悩のうちに国家の偉大さの根を置くものである。それは不完全に組み立てられた偉大
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