ノ語り、ふたりして何かの口実の下に大佐を訪れた。そしてそれをきっかけに何度も訪問するようになった。大佐は初めいっさい口をつぐんでいたが、ついに事情を打ち明けた。それで司祭と理事とは、大佐の身の上をことごとく知り、ポンメルシーが自分の幸福を犠牲にして子供の未来をはかってる事情を知るに至った。そのために、司祭は大佐に対して敬意と温情とをいだき、大佐の方でもまた司祭を好むようになった。その上、もしどちらも至ってまじめであり善良である場合には、およそ世の中に老牧師と老兵士とほど、容易に理解し合い容易に融合し合うものはない。根本においては彼らは同じ種類の人間である。一は下界の祖国に身をささげ、一は天上の祖国に身をささげている。ただそれだけの違いである。
 年に二度、一月一日と聖ジョルジュ記念日([#ここから割り注]訳者注 四月二十三日[#ここで割り注終わり])とに、マリユスは義務としての手紙を父に書いた。それは伯母が口授したもので、形式的な文句の書き写しともいえるようなものだった。ジルノルマン氏が許容したことはただそれだけだった。すると父親はきわめて心をこめた返事をよこした。祖父はそれを受け取っ
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