A自分の古い将軍たるジューベールが剣を上げて「進め!」と叫んでる瞬間にたおれるのを見た。また戦略上自分の一隊を引率して小船に乗り、ゼノアからやはりその海岸のある小さな港へ向かった時には、七、八|艘《そう》のイギリス帆船の網の中に陥った。ゼノア人の船長の考えでは、大砲を海中に投じ、兵士を中甲板に隠し、商船と見せかけて暗中をのがれたがった。しかるにポンメルシーは、旗檣《きしょう》の綱に三色旗を翻えさし、毅然《きぜん》としてイギリス二等艦の砲弾の下を通過した。それから二十里ばかり行くうちに、彼の大胆さはますます加わり、その小船をもってイギリスの大運送船を襲って捕獲した。その運送船はシシリアに兵士を運んでいたのであって、舷側《げんそく》までいっぱいになるほど人員と馬とを積んでいた。一八〇五年には、フェルディナンド大公からグンズブールグを奪ったマーレル師団の中にいた。ウェッティンゲンにおいては、弾丸の雨下する中に、竜騎兵第九連隊の先頭に立って致命傷を受けたモープティー大佐を腕に抱き取った。アウステルリッツにおいては、敵の砲火の下を冒してなされたあの驚嘆すべき梯形《ていけい》行進中にあって勇名を上
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