ナルディエは尋ねた。
「なにどこから来るもんかね、」と女房は言った、「窓からよりほかはないじゃないかね。」
「俺《おれ》はそれが飛んで来る所を見た。」とビグルナイユは言った。
テナルディエは急いで紙をひらき、蝋燭《ろうそく》の火に近づけた。
「エポニーヌの手蹟《て》だ。畜生!」
彼は女房に合い図をすると、女房はすぐにそばにきた。彼は紙に書いてある一行の文句を示して、それから鈍い声でつけ加えた。
「早く! 梯子《はしご》だ。肉は鼠罠《ねずみわな》に入れたままで、引き上げよう。」
「首をちょんぎらずにかえ。」と女房は尋ねた。
「そんな暇はねえ。」
「どこから逃げるんだ。」とビグルナイユは言った。
「窓からよ。」とテナルディエは答えた。「エポニーヌが窓から石をほうり込んだところを見ると、その方には手が回ってねえことがわかる。」
仮面をつけた腹声の男は、大鍵《おおかぎ》を下に置き、両腕を高く上げて、黙ったままその手を三度急がしく開いたり握ったりした。それは船員らの間の戦闘準備の合い図みたいなものだった。捕虜をとらえていた悪漢はその手を離した。またたく間に、繩梯子《なわばしご》は窓の外にお
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