由になったので、それをねじあけ、中の鋸を使って縛られてる繩《なわ》を切ったものであろう。マリユスが気づいたかすかな音とわずかな動作とは、またそれで説明がつく。
見現わされるのを恐れて身をかがめることができなかったので、彼は左足の縛りめは切らなかったのである。
悪漢どもは初めの驚きからようやく我に返った。
「安心しろ。」とビグルナイユはテナルディエに言った。
「まだ左の足が縛ってある。逃げることはできねえ。受け合いだ。あの足を縛ったなあ俺《おれ》だぜ。」
そのうちに捕虜は声を揚げた。
「君らは気の毒な者どもだ。わしの生命はそう骨折って大事にするほどのものはない。ただ、わしに口をきかせようとしたり、書きたくないことを書かせようとしたり、言いたくないことを言わせようとしたりするからには……。」
彼は左腕の袖《そで》をまくり上げてつけ加えた。
「見ろ。」
同時に彼は腕を伸ばして、右手に木の柄をつかんで持っていた焼けてる鑿《たがね》を、そのあらわな肉の上に押し当てた。
じゅーっと肉の焼ける音が聞こえ、拷問部屋《ごうもんべや》に似たにおいが室《へや》にひろがった。マリユスは恐ろしさに気
前へ
次へ
全512ページ中495ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング