なんて持ち合わせはねえって言いなさるだろう。なにわしもそう無茶なことは言いませんや。今それをくれとは言やあしません。ただ一つお頼みがあるんでさあ。わしが言うとおりに書いてもらいてえんです。」
 そこで、テナルディエは言葉を切った。それから火鉢《ひばち》の方へちょっと笑顔を向けながら、一語一語力を入れて言い添えた。
「ことわっておくが、お前さんに字が書けねえとは言わせない。」
 その時の彼の微笑には、宗教裁判所の大法官をもうらやませるほどのものがあった。
 テナルディエはルブラン氏のすぐそばにテーブルを押しやって、引き出しからインキ壺《つぼ》とペンと一枚の紙とを取り出した。彼はその引き出しを半ば開いたままにしておいたが、そこにはナイフの長い刃が光っていた。
 彼はルブラン氏の前に紙を置いた。
「書きなさい。」と彼は言った。
 捕虜はついに口を開いた。
「どうして書けというんです、このとおり縛られているのに。」
「なるほどな、」とテナルディエは言った、「ご道理《もっとも》だ。」
 そして彼はビグルナイユの方を向いた。
「旦那《だんな》の右の腕を解いてくれ。」
 パンショー一名プランタニエ一
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