るいは身を脱するだろう。一方を倒しても、また他方を見殺しにしても、いずれも悔恨の念は免れぬ。何となすべきか? いずれを選ぶべきか? 最も強き記憶、内心の深き誓い、最も神聖なる義務、最も尊き文言、それにそむくべきか。父の遺言にそむくべきか。あるいはまた罪悪の行なわるるのを見過ごすべきか。一方には父のために懇願する「わがユルスュール」の声が聞こえるように思われ、他方にはテナルディエのことを頼む大佐の声が聞こえるように思われた。そして彼は気も狂わんばかりの心地がした。膝《ひざ》も身体をささえきれなくなった。しかも眼前の光景は切迫していて、熟慮のひまさえもなかった。自分が左右し得ると思っていた旋風にかえって運び去らるるがようなものだった。彼はほとんど気を失いかけた。
 その間にテナルディエは――われわれは以後彼をこの名前で呼ぶことにしよう――われを忘れたようにまた勝利に酔うたがように、テーブルの前をあちらこちら歩いていた。
 彼は手のうちに蝋燭《ろうそく》をつかみ、蝋は壁にはねかかり火は消えかかったほどの激しさでそれを暖炉の上に置いた。
 それから彼は恐ろしい様子でルブラン氏の方をふり向き、こ
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