りはまったく牛とでも申したいくらいで。」
 女房はその賛辞に動かされて、媚《こ》びられた怪物が嬌態《しな》を作るような様子で言った。
「あなたはいつもほんとに親切でね、ジョンドレット。」
「ジョンドレットですって。」とルブラン氏は言った。「私はまたファバントゥー君というのだと思っていましたが。」
「ファバントゥー一名ジョンドレットでありまして、」と亭主は急いで言った、「俳優の雅号でございます。」
 そしてルブラン氏に気づかれぬようちょっと肩をそびやかして女房をたしなめ、力をこめた媚びるような調子で言い進んだ。
「いや、この家内と私とは、いつも仲よく暮らしていますんで、そういうことでもなかった日には、もう世に何の楽しみもございません。私どもはそれほど不仕合わせなので、旦那様。腕はあっても仕事はありませず、元気はあっても働く所がありません。いったい政府はどうしているのでしょう。私は決して旦那、過激党ではございません、騒ぎを起こす者ではございません、政府に楯《たて》をつく者ではございません。ですが私がもし大臣にでもなりましたら、断じてこんな状態にはして置きません。まあたとえば、私は娘どもに紙
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