いた。口の欠けた水差しは、壁のほとんど半分に影を投じていた。室の中には何とも言えぬ恐ろしいぞっとするような静けさがたたえていた。今にも何か非常なことが起こりそうだった。
 ジョンドレットはよほど何かに気を取られてると見えて、パイプの火の消えたのも知らずにいたが、それからまた立ってきて椅子《いす》に腰掛けた。蝋燭《ろうそく》の光で、顔の荒々しい狡猾《こうかつ》そうな角《かど》張った所が、いっそうよく目立った。そして眉《まゆ》をひそめたり急に右手を開いたりして、あたかもその陰惨な内心で最後にも一度ひとりで問いひとりで答えてるかのようだった。そういう自分ひとりの問答のうちに、彼は急にテーブルの引き出しを開き、中に隠してあった料理用の長いナイフを取り出し、指の爪を切ってみてその刃を試《ため》した。それがすむと、ナイフをまた引き出しにしまって、それをしめた。
 マリユスの方では、ズボンの右の隠しにあるピストルをつかみ、それを引き出して引き金を上げた。
 引き金を上げる時ピストルは、鋭いはっきりした小さな音を出した。
 ジョンドレットはぎくりとして、椅子の上に半ば身を起こした。
「だれだ?」と彼は
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