や》の隣が悪漢の巣窟《そうくつ》で、壁越しにその計画をすっかり聞き取った。――罠《わな》を張った悪漢はジョンドレットとかいう男である。――共犯者もいるらしい。たぶん場末の浮浪人どもで、なかんずくパンショー一名プランタニエ一名ビグルナイユという男がいる。――ジョンドレットの娘どもが見張りをするだろう。――ねらわれてる人は、その名前もわからないので、前もって知らせる方法もない。――そしてそれらのことは晩の六時に、オピタル大通りの最も寂しい所、五十・五十二番地の家で、実行されることになっている。
 その番地を聞いて、警視は顔を上げ、冷ややかに言った。
「では廊下の一番奥の室《へや》だろう。」
「そうです。」とマリユスは言った、そしてつけ加えた。「その家を御存じですか。」
 警視はちょっと黙っていたが、それから靴《くつ》の踵《かかと》をストーブの火口で暖めながら答えた。
「そうかも知れないね。」
 それから、マリユスにというよりもむしろその襟飾《えりかざ》りにでも口をきいてるように目を下げて、半ば口の中で続けて言った。
「パトロン・ミネットが多少関係してるに違いない。」
 その言葉にマリユスは
前へ 次へ
全512ページ中415ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング