に、ストーブに身を寄せ、三重まわしの大きなマントの袖《そで》を両手で上げている、背の高い男がひとりそこに立っていた。四角張った顔、脣《くちびる》の薄い引き締まった口、荒々しい半白の濃い頬鬚《ほおひげ》、ふところの中まで見通すような目つき、それは透徹する目ではなくて、探索する目と言う方が適当だった。
その男は獰猛《どうもう》さと恐ろしさとにおいてはあえてジョンドレットに劣りはしなかった。番犬も時とすると、狼《おおかみ》に劣らず出会った者に不安を与えることがある。
「何の用かね。」と彼はぞんざいな言葉でマリユスに尋ねた。
「部長さんは?」
「不在だ。私《わし》がその代理をしている。」
「ごく秘密な事件ですが。」
「話してみたまえ。」
「そしてごく急な事件です。」
「では早く話すがいい。」
その男は平静でまた性急であって、人をこわがらせまた同時に安心させる点を持っていた。恐怖と信頼とを与えるのだった。マリユスは彼にできごとを語った。――ただ顔を知ってるばかりの人ではあるが、その人が今夜、待ち伏せに会うことになっている。――自分はマリユス・ポンメルシーという弁護士であるが、自分のいる室《へ
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