とりはだぶだぶの上衣をつけた髯《ひげ》のある男で、もひとりはぼろをまとった髪の長い男だった。髯のある方は丸いギリシャ帽をかぶっていたが、もひとりは何もかぶらず、髪の上に雪が積っていた。
 ふたりの上に頭をつき出して、マリユスはその言葉をよく聞き取ることができた。
 長髪の男は相手を肱《ひじ》でつっ突いて言った。
「パトロン・ミネットの力を借りれば、しくじることはねえ。」
「そうかな。」と髯の男は言った。
 長髪の方は続けた。
「ひとりに五百弾でいいだろう。もしどじっても、五年か六年、まあ長くて十年だ。」
 相手はやや躊躇《ちゅうちょ》して、ギリシャ帽の下を指でかきながら答えた。
「そっちは実際だからな。そんな目にあっちゃあ。」
「大丈夫しくじりっこはねえ。」と長髪の方は言った。「爺《と》っつぁんの小馬車に馬をつけとくんだから。」
 それから彼らはゲイテ座で前日見た芝居のことを話し初めた。
 マリユスは歩き出した。
 不思議にも壁の後ろに隠れ雪の中にうずくまってるそれらふたりの男の曖昧《あいまい》な話は、何だかジョンドレットの恐ろしい計画に関係があるらしく、マリユスには思われてならなかっ
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