にしてる、五フランばかりでどうしろっていうのか。椅子《いす》とガラスの代にもならねえ。せめて入費《いりめ》ぐらいは置いてくがあたりまえだ。」
その間にルブラン氏は、青いフロックの上に着ていた大きな褐色《かっしょく》の外套《がいとう》をぬいで、それを椅子の背に投げかけた。
「ファバントゥー君、」と彼は言った、「私は今五フランきり持ち合わせがないが、一応娘を連れて家に帰り、今晩またやってきましょう。払わなければならないというのは今晩のことですね……。」
ジョンドレットの顔は不思議な色に輝いた。彼は元気よく答えた。
「さようでございます、尊い旦那様《だんなさま》。八時には家主の所へ持って参らなければなりません。」
「では六時にやってきます、そして六十フラン持ってきましょう。」
「ほんとに御親切な旦那様!」とジョンドレットは夢中になって叫んだ。
そしてすぐに彼は低く女房にささやいた。
「おい、あいつをよく見ておけよ。」
ルブラン氏は若い美しい娘の腕を取って、扉《とびら》の方へ向いた。
「では今晩また、皆さん。」と彼はいった。
「六時でございますか。」とジョンドレットはきいた。
「正六時
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