う存じます。」とジョンドレットは頭を床にすりつけんばかりにして言った。――それから、ふたりの客があわれな部屋《へや》の内部を見回してる間に、彼は姉娘の耳元に身をかがめて、低く口早に言った。
「へん、俺が言ったとおりじゃねえか。ぼろだけで、金は一文もくれねえ。奴《やつ》らはみんなそうだ。ところでこの老耄《おいぼれ》にやった手紙には、こちらの名前は何として置いたっけな。」
「ファバントゥーよ。」と娘は答えた。
「うむ俳優だったな、よし。」
それを思い出したのはジョンドレットに仕合わせだった。ちょうどその時ルブラン氏は、彼の方へ向いて、名前を思い出そうとしてるような様子で彼に言った。
「なるほどお気の毒です、ええと……。」
「ファバントゥーと申します。」ジョンドレットは急いで答えた。
「ファバントゥー君と、なるほどそうでしたな、ええ覚えています。」
「俳優をしていまして、元はよく当てたこともございますので。」
そこでジョンドレットは、この慈善家を捕うべき時がきたと思い込んだ。で彼は、市場香具師《いちばやし》のような大げさな調子と大道乞食《だいどうこじき》のような哀れな調子とをないまぜた声
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