と言ってやがる。俺たちは酒飲みでなまけ者だと言ってやがる。そして御当人は! 奴らはいったい何だい。若《わけ》え時には何をしてきたんだい。泥坊じゃねえか。そうででもなけりゃあ金持ちになれるわけはねえ。ええ、世間は四すみから持ち上げて、すぽっと投げ出しちまうがいい。みんなつぶれっちまうかも知れねえ。つぶれなくっても、皆無一文になるわけだ。それだけ儲《もう》けものだ。――だがあの慈善家のばか野郎、いったい何をしてるんだ。本当に来るのか。ことによると番地を忘れたかな。あの爺《じじい》の畜生め……。」
その時軽く扉《とびら》をたたく音がした。男は飛んでいって扉を開き、うやうやしくおじぎをし、景慕のほほえみを浮かべて、叫んだ。
「おはいり下さい。御親切な旦那《だんな》、また美しいお嬢様も、どうかおはいり下さい。」
年取ったひとりの男と若いひとりの娘とが、その屋根部屋の入り口に現われた。
マリユスはまだのぞき穴の所を去っていなかった。そして今彼が受けた感じは、とうてい人間の言葉をもっては現わせない。
現われたのは実に彼女[#「彼女」に傍点]だった。
およそ恋をしたことのある者は「彼女」とい
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