に教会堂から出るのを見たわ、それから辻馬車に乗る所も。あたしちゃんと、廊下の一番奥の右手の戸だって言っておいたよ。」
「それでもどうしてきっと来ることがわかるんだ。」
「馬車がプティー・バンキエ街へ来るのを見たのよ。だから駆けてきたんだわ。」
「どうしてその馬車だってことがわかる?」
「ちゃんと馬車の番号を見といたんだよ。」
「何番だ。」
「四百四十番よ。」
「よしお前は悧巧《りこう》な娘《こ》だ。」
娘はまじまじと父を見つめ、そして足にはいてる靴《くつ》を見せながら言った。
「悧巧《りこう》な娘かも知れないわ。だがあたしはもうこんな靴はごめんよ、もうどうしたっていやよ。第一|身体《からだ》に悪いし、その上みっともないわ。底がじめじめして、しょっちゅうぎいぎい言うのくらい、いやなものったらありはしない。跣足《はだし》の方がよっぽどましだわ。」
「もっともだ。」と父は答えた。そのやさしい調子は娘の荒々しい言い方と妙な対照をなしていた。「だが教会堂へは靴をはかなくちゃはいれねえからな。貧乏な者だって靴をはかなきゃならねえ。神様の家へは跣足では行かれねえよ。」と彼は苦々《にがにが》しくつけ
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