ラクズーとは何であったか。暗夜そのものであった。彼は空が黒く塗られるのを待って姿を現わした。夜になると穴から出てきたが、夜が明けないうちにまたそこへ引っ込んでいった。その穴はどこにあるか、だれも知ってる者はなかった。まっくらな中ででも、仲間の者にまで背中を向けて口をきいた。そしてクラクズーというのも彼の実際の名前ではなかった。彼は言っていた、「俺《おれ》はパ・デュ・トゥー(皆無)というんだ。」もし蝋燭《ろうそく》の光でもさそうものなら、すぐに仮面をかぶった。彼はこわいろ使いだった。バベはよく言った、「クラクズーは二色の声を持ってる夜の鳥だ[#「クラクズーは二色の声を持ってる夜の鳥だ」に傍点]。」彼は朦朧《もうろう》とした恐ろしい、ぶらつき回ってる男だった。クラクズーというのは綽名《あだな》であって、果たして何か名前を持ってるかさえもわからなかった。口よりも腹から声を出すことが多いので、果たして声というものを持ってるかさえもわからなかった。だれもその仮面をしか見たことがないので、果たして顔を持ってるかさえもわからなかった。幻のように彼は忽然《こつぜん》と姿を消した。出て来る時も、まるで地
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