に彼はまたひどく気が立っていた。芝居から出て、ひとりの小間物屋の女が溝《どぶ》をまたいでその靴下留めが見えたのを、頑固《がんこ》にふり返りもしなかった。「僕はああいう女をも喜んで採集するんだがな[#「僕はああいう女をも喜んで採集するんだがな」に傍点]、」と言ったクールフェーラックの言葉に、彼はほとんど嫌悪《けんお》の念をいだいた。
クールフェーラックは翌日、彼をヴォルテール珈琲《コーヒー》店に招いた。マリユスはそこに行って、前日よりもなおいっそうむさぼり食った。彼はすっかり考え込んでおり、またごく快活だった。機会あるごとにすぐに高笑いをしたがってるかのようだった。ひとりの田舎者《いなかもの》に紹介されるとそれを親しく抱擁した。学生の一団がテーブルのまわりに陣取っていた。国家がわざわざ金を出してソルボンヌ大学で切り売りさしてるばかげた講義のことを論じていたが、次にその談話は、多くの辞書やキシュラの韻律法などにある誤謬《ごびゅう》や欠陥のことに落ちていった。マリユスはその議論をさえぎって叫んだ。「それでも十字勲章をもらうのは悪くないぞ!」
「これはおかしい!」とクールフェーラックはジャン
前へ
次へ
全512ページ中293ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング