た。
 彼女の姿が見えなくなるまで、彼はその後ろを見送った。それから気が狂ったようにリュクサンブールの園の中を歩き初めた。時とするとひとりで笑ったり声高に語ったりしがちだった。まったく夢を見ているようで、子もりの女どもまで彼が近づいて来ると、めいめい自分が恋せられてるんだと思ったほどである。
 彼は街路でまた彼女に会いはすまいかと思って、リュクサンブールを出た。
 彼はオデオンの回廊の下でクールフェーラックに行き会った。「いっしょに食事をしにこいよ、」と彼はクールフェーラックに言った。彼らはルーソーの家に行き、六フラン使い果たした。マリユスは鬼のようによく食べた。給仕にも六スー与えた。食後のお茶の時に、彼はクールフェーラックに言った。「君は新聞を読んだか。オードリ・ド・プュイラヴォーの演説は実にりっぱじゃないか。」
 彼はすっかり恋に取っつかれていた。
 食事をすますと、彼はクールフェーラックに言った。
「芝居をおごろう。」彼らはポルト・サン・マルタン座へ行って、アドレーの[#「アドレーの」に傍点]旅籠屋《はたごや》でフレデリックの演技を見た。マリユスはすてきにおもしろがった。
 同時
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