には、今日のパリーの浮浪少年《ガマン》は、いにしえのローマのギリシャ人のように、年老いた世界の皺《しわ》を額《ひたい》に有する年少民衆である。
 浮浪少年は国民にとって一つの美であり、また同時に一つの病である。なおさなければならない病である。いかにしてなおすか? 光明をもってである。
 光明は人を健やかにする。
 光明は人を輝かす。
 あらゆる社会的の麗しい光輝は、科学、文学、美術、および教育から生ずる。人を作れ、人を作れよ。彼らをして汝に温暖を与えしめんがために、彼らに光を与えよ。いつかは普通教育の光輝ある問題は、絶対的真理の不可抗な権威をもって確立さるるに至るであろう。そしてその時におよんでこそ、フランス精神の監視の下に政事を行なう人々は、次の選択をなさなければならないだろう、すなわちフランスの少年かもしくはパリーの浮浪少年か、光明のうちに燃ゆる炎か、もしくは暗黒のうちにひらめく燐火《りんか》か。
 浮浪少年はパリーを表現し、パリーは世界を表現する。
 なぜかなれば、パリーは全部であるからである。パリーは人類の天井である。この驚くべき一大都市は、過去現在のあらゆる風習の縮図である
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