た。ちょっとした偶然の機会から彼はそれを得た。ある日プリュタルク婆さんは室《へや》の片すみで小説を読んでいた。その方がよくわかるからと言って声高に読んでいた。声高に読むことは読んでるのだと自分自身にのみこませることである。至って声高に物を読んで、自分は今読書をしてると自分自身に納得させるような様子をしてる者が、世にはずいぶんある。
 プリュタルク婆さんはそういう元気で、手に持ってる小説を読んでいた。マブーフ氏は聞くともなしにそれを聞いていた。
 そのうちにプリュタルク婆さんは次のような文句の所にきた。それはひとりの竜騎兵の将校と美人との話だった。
『……美人ブーダ(口をとがらした)、と竜騎兵《ドラゴン》は……。』
 そこで婆さんは眼鏡《めがね》をふくためにちょっと言葉を切った。
「仏陀《ブーダ》と竜《ドラゴン》……。」とマブーフ氏は口の中でくり返した。「なるほどそのとおりだ。昔一匹の竜がいて、その洞穴の奥で口から炎を吐き出して天を焦がした。既に多くの星はその怪物から焼かれたことがあり、その上|奴《やつ》は虎のような爪を持っていた。でその時仏陀は洞穴の中にはいってゆき、首尾よく竜を改心さ
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