を与えていた。マリユスは考え込んで、天井を見上げ、ほとんど機械的にくり返した。「母?……」
その時、彼は自分の肩にアンジョーラの手が置かれたのを感じた。
「おい、」とアンジョーラは彼に言った、「母とは共和のことだ。」
六 逼迫《ひっぱく》
その晩のことは、マリユスに深い動揺を残し、彼の心のうちに悲しい暗黒を残した。麦の種を蒔《ま》くために鉄の鍬《くわ》で掘り割られる時に、地面が受くるような感じを、彼もおそらく感じたであろう。その時はただ傷をのみ感ずる。芽ぐみのおののきと実を結ぶ喜びとは、後日にしかやってこない。
マリユスは陰鬱《いんうつ》になった。彼はようやく一つの信仰を得たばかりだった。それをももう捨ててしまわなければならないのか。彼は自ら否と断言した。疑惑をいだくを欲しないと自ら宣言した。それでもやはり疑い初めた。二つの宗教、一つはいまだ脱し得ないもの、一つはいまだ入り込み得ないもの、その中間にあるはたえ難いことである。かかる薄暮の薄ら明りは、蝙蝠《こうもり》のような心をしか喜ばせない。マリユスははっきりした眸《ひとみ》であった。彼には真の光明が必要だった。懐疑
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