ルイ十八世およびナポレオンがクーデターを断行した十八日霧月共和八年、――また六月十八日のワーテルロー[#ここで割り注終わり])。始めと終わりとがつきまとう意味深い特質をもったこの人間の全宿命が、そこにあるんだ。」
 アンジョーラはその時まで黙っていたが、沈黙を破ってクールフェーラックに言った。
「君は贖罪《しょくざい》という語をもって、罪悪を意味させるんだろう。」
 突然ワーテルローという語が現われたので既にいたく激していたマリユスは、この罪悪[#「罪悪」に傍点]という語を聞いてもうたえ切れなくなった。
 彼は立ち上がって、壁にかかってるフランスの地図の方へおもむろに歩み寄った。地図の下の方を見ると、一つの小さな島が別に仕切りをして載っていた。彼はその仕切りの上に指を置いて言った。
「コルシカ島、これがフランスを偉大ならしめた小島だ。」
 それは凍った空気の息吹《いぶき》のようだった。人々は皆口をつぐんだ。何か起こりかけていることを皆感じた。
 バオレルはボシュエに何か答えながら、いつもやる半身像めいた姿勢をとろうとしていたが、それをやめて耳をそばだてた。
 だれをも見ないでその青い眼
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