あ!」
「僕だったらあの女をうまく扱ってやるがね。」
「言うはやすしさ。」
「行なうもまた同じだ。ムュジシェッタというんだったね。」
「そうだ。だが君、りっぱな女だぜ。非常に文学が好きで、足が小さく手が小さく、着物の着つけもいいし、まっ白で、肉がよくついていて、カルタ占女《うらない》のような目をしている。僕はすっかり打ち込んじゃった。」
「それじゃあ、ごきげんを取り、上品に振る舞い、膝《ひざ》の骨を働かせなくちゃいかんよ。ストーブの家から毛糸皮のいいズボンを買ってきたまえ。それでうまくいくよ。」
「いくらくらいだ。」とグランテールが叫んだ。
 第三番目のすみでは、夢中になって詩が論ぜられていた。多神教の神話はキリスト教の神話とぶつかり合っていた。オリンポスが問題となっていたが、ジャン・プルーヴェールはロマンティシズムからその味方をしていた。ジャン・プルーヴェールは静かな時しか内気ではなかった。一度興奮しだすとすぐに爆発し、一種の快活さがその熱烈の度を強め、嬉々《きき》たると同時に叙情的になった。
「神々を悪く言いたもうな。」と彼は言った。「神々はおそらく消滅してはしない。ジュピテルは僕
前へ 次へ
全512ページ中210ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング