考え込んでるようだったが、目を上げた。
「えー?」と彼は言った。
「君はマリユス・ポンメルシー君だろう。」
「もちろん。」
「僕は君をさがしていたんだ。」とレーグル・ド・モーは言った。
「どうして?」とマリユスは尋ねた。彼はまさしく祖父の家を飛び出してきたばかりのところだった。そして今眼前に立ってるのはかつて見たこともない顔だった。「僕は君を知らないが。」
「僕だってそのとおり。僕は君を少しも知らない。」とレーグルは答えた。
 マリユスは道化者にでも出会ったように思い、往来のまんなかでまやかしを初められたのだと思った。彼はその時あまりきげんのいい方ではなかった。眉《まゆ》をひそめた。レーグル・ド・モーは落ち着き払って言い続けた。
「君は一昨日学校へこなかったね。」
「そうかも知れない。」
「いや確かにそうだ。」
「君は学生なのか。」とマリユスは尋ねた。
「そうだ。君と同じだ。一昨日、ふと思い出して僕は学校へ行ってみた。ねえ君、ときどきそんな考えだって起こるものさ。教師がちょうど点呼をやっていた。君も知らないことはないだろうが、そういう時|奴《やつ》らは実際|滑稽《こっけい》なことをする
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